法律の基礎知識!書評・レビュー「ビジネスマンのための「法律力」養成講座」

  • 2020年9月17日
  • 2021年1月20日
  • 法律
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どうも、武信です。(No934)

 

今回は、法律初心者のための、経営コンサルタント小宮一慶氏の著書である「ビジネスマンのための「法律力」養成講座」の書評・レビュー記事です。

 

小宮一慶氏の本は、過去、5冊くらい、読んできました。

 

ほとんどの本が一定の品質を保っており、「一流コンサルタントだなぁ」と感じました。

 

今回は、幅広い分野の著書がある小宮一慶氏の本の中でも、特に、法律の本をレビューします。

 

興味がある人は続きをお読みください。

 

 

1 第1章「働き方改革」の現実。

 

第1章をまとめます。P20〜36。

 

就業規則とは、文字どおり、従業員(労働者)が働く際の規則なのですが、これを法律的に規定しているのが「労働基準法」です。

 

労働基準法の第9条が就業規則に当てられています。

 

「常時十人以上の労働者を使用する」場合には、「就業規則」を制定しなければなりません。

 

従業員が10人を超えたら、「就業規則」制定です!忘れないように!

 

また、「次に掲げる事項」には、就業時間、賃金、随時の賃金、食費・作業用品等の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償など、10項目あり、そのうちの9番目に、表彰及び制裁の定めがあり、賞罰委員会規定制定というのは、これに該当します。

 

「働き方改革」もあって、就業規則というと、まず気になるのが、労働時間や休日でしょうが、その前提として、

● 就業規則で定められている内容は、労働者にとって労働基準法より厳しいものにしなければならない、とあります。

 

1 労働基準法上の毎週の労働時間は、「休憩時間を除き一週間について40時間を超えて労働させてはならない」となっています。

 

2 また、「一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならない」となっています。

 

3 さらに、「使用者は労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」とあります。

 

加えて、「前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない」とあります。(上記3つが前項です)

 

ホワイトカラーの間で一般的になっている週休2日というのは、労働基準法以上に労働者にとっては良い条件でした。

 

しかし、週40時間や1日8時間とか言っていますが、事実上、残業や休日出勤、つまり時間外労働があるじゃないか、となりますが、そこで登場するのが第三六条であり、いわゆる「三六(さぶろく、さんろく)協定」の名で知られる労使協定を定めることができるとしています。

 

つまり、法定労働時間を超える残業や休日に出勤させることに関しては、「労働基準法第三六条の規定にしたがった労使間の協定があれば可能だ」、というわけです。

 

しかし、協定すればいくらでも働かせていいわけでもなく、このあたりを明確にしたのが「働き方改革」での法案でした。

 

また、「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」「労働契約法」などあります。

 

労働契約とは「個別の人との契約で、そこでは契約条件が就業規則に満たない場合、就業規則と同じ条件にしなければならない」、といったことが定められています。

 

しかし、一昔前までは、法定労働時間も就業規則上の労働時間も有名無実の長時間労働が当たり前の企業では、業種によっては数多くありました。

 

最近は、こうした企業は「ブラック企業」として、騒がれ、就業希望者が敬遠するようになりました。

 

少し前、いわゆる闇営業問題の過程で、若手芸人たちの過酷な労働条件が話題になった吉本興業はどうなのでしょう?

 

結論から言うと、吉本興業の場合、芸人たちは社員ではありません。

 

それそれが「個人事業主」として、吉本興業とは「業務委託」という形で契約しています。

 

だから、労働基準法も労働契約法も関係なく、守ってくれません。

 

だから、最低賃金の規定の適用もなかったのです

 

それでは、下請けと同じで、すると下請代金支払遅延等防止法というのがあり、そこには書面交付義務がある、と書かれていますが、昔からの慣行で契約書は交わされていなかったようです。

 

しかし、法令に特別の定めがある場合を除き、口約束でも契約は成立します

 

ただ、裁判になったときに証拠を示さないといけないから、書面をもってしないといけないという話になりますし、下請法三条は、どうしても立場が悪くなりがちな下請け業者を守るために、重要事項については書面での締結を義務付けています。

 

仮に契約書がなくても、口約束したことは、当然、契約として成立します。

 

また、意思表示とその承諾で契約は成立しているとも言えます。(詳しい条項は省きます)

 

逆に言えば、意思表示、あるいは承諾なしには契約は成立しない、ということです。

 

これまで紹介した労働基準法に大きな改正が行われ、2019年4月1日より施行されたのが、いわゆる「働き方改革関連法」です。

 

詳しくは本をお読みください。

 

この「働き方改革関連法」を知っておくと、今後の働き方で有利な交渉ができるかもしれません。

 

法律は知らないと、損をします。

知っていれば、有利な交渉ができます。

 

 

2 第4章 リクナビ「内定辞退率」問題に見る巨大ネット企業から個人を守る法律の必要性。

 

第4章をまとめます。P108〜131。

 

2019年9月6日、リクルートキャリア社が、生活情報サイト「リクナビ」の閲覧状態をもとに内定辞退率を予測して販売したとして、厚生労働省東京労働局から、職業安定法違反で行政指導を受けていたことが発覚しました。

 

「リクナビ内定辞退率問題」とは、「リクナビ」が就職活動中の学生の内定辞退率を予測したデータを、トヨタや三菱電機などに販売していた問題で、つまりは、本人の同意なしに、個人情報を勝手に選別・加工して商売のネタにしていた、それも、その学生の一生に関わる可能性があるデータを、です。

 

このような情報を「要配慮個人情報」といいます。

 

さて、今は売り手市場(学生側が有利)ですが、学生が有料とはいえ、就活の手段はリクナビとマイナビに限定されている学生の立場は実は弱いです。

 

今後、求人の需給状況が変われば、ますます学生側が不利になります。

 

詳しいカラクリは本をお読みください。

 

今回のリクルート問題で、直接法律に抵触するのは、本人の同意なしでの、利用目的の制限を定めた第15条、第16条と、第三者への提供を禁止した第23条でしょう。

 

今回の問題で対象となった学生は合計7万4878人

 

このうちプライバシーポリシーの不備により、同意を得ていなかった学生は7983人です。

 

つまり、法的に問われているのは7983人だけになりますが、だいたい、読まれていないことを前提としているような詳細な個人情報に関する同意条項、たとえ、読んで同意したくないと思ったとしても、同意しなければ登録できないわけですから、「同意していたことになる」7万4878人ー7983人、つまり、6万6895人にとっても、「同意」を盾に、リクルート側が権利を主張しても、とうてい納得できないでしょう。

 

リクルート社だけでなく、あらゆる募集情報提供事業、さらに個人情報を扱うすべての企業に対する信頼が損なわれたのです。

 

さらに、深い問題があり、それは「一般的な個人情報」「要配慮個人情報(センシティブデータ)」(上記で1回、触れましたね)の問題です。

 

「要配慮個人情報」とは、「本人のプライバシーに関するとくに配慮が必要な情報」です。

 

政治的信条や宗教に関することや病歴、犯罪歴などであり、もちろん内定辞退率などもそれに該当します。

 

法律上は、その取得については「本人の事前同意」を原則として必要とします。

 

一方、一般的な個人情報に関しては、原則、事前同意は必要としません。(誰が、どういう会社のホームページを見ているかなどの情報)

 

ここで、もうひとつ考えないといけないのが「プロファイリング」です。

 

たいていの人が、スマホなどを見ていて、ある特定の広告が自身のスマホによく出てくるなと感じたことがあると思いますが、これは私たちの検索情報をAIが分析して、個人の属性や嗜好を予想しているからです。

 

これを「プロファイリング」といいます。

 

性別、職業、趣味、年齢、嗜好などを予測して、特定の個人をターゲットとした広告などを提供するのです。

 

問題は、一般的な個人情報から、要配慮個人情報が「創り出される」可能性があるという点です。

 

AIが解析してしまうのです。

 

そして、この「創り出す」行為については、どこまで規制できるか、法律的にはっきりしていません。

 

ですので、内定辞退率の問題も、倫理的にはアウトでも、法律的には職業安定法で対応するしかない、という問題が起こっています。

 

また、採用に関しては、もう一つ問題があり、それは「センシング」というものです。

 

たとえば、人の静脈の動きをカメラでとらえることにより、「その人がどういう精神状態にあるかを分析する技術」も発達しています。

 

人の表面的な表情だけでなく、静脈の状況により、「その表情の裏に隠れる本心」までもが分かるのです。

 

表面的には好意を示していても、実際にはそうではないことが分かります。

 

また、静脈分析だけでなく、「表情や声のトーンの分析」でも本心が分かる解析が可能と言われています。

 

このような解析は、採用時だけでなく、場合によっては、政治信条などの判定にも使われる可能性があり、人権との関係でどこまで許容されるかは、今後の法律論を待つ状態です。

 

情報はビジネスになるのです。

 

スマホやAIの発達により、ビッグデータの収集、解析、プロファイリングが可能となり、大きなビジネスチャンスが生まれました。

 

しかし、同時に、個人情報やプライバシーをどこまで保護するか問題が生まれました。

 

欧州ではGDPRにより、採用や融資など、個人の人生の将来に大きな影響を与える決定に関しては、AIによるプロファイリングの評価のみで行ってはならず、原則として、人間が実質的に関わることを義務付けています

 

データが金になる時代において、リクルートはやりすぎてしまったのです。

 

学生へのアドバイスに利用するビジネスモデルだったら問題なかったのでしょう。

 

「得た情報から見て、あなたはこういう傾向があるから、この辺は注意した方がいいですよ」、などです。

 

でも、これだと儲かりませんから、企業に売ってお金を儲けようとしました。

 

しかし、学生側を支援すれば、リクナビの人気が高まり、結果として企業の間でのリクナビの価値も高まったかもしれないのに、残念なことです。

 

リクルート社に欠けていたのは、「個人情報は個人のもの」という大原則であり、この視点がなかったから、今回の問題が起きました。

 

学生のためのビジネスではなかったのです。

 

さらに、ターゲティング広告で露呈しているフェイスブックやグーグルなどの巨大企業の個人情報利用もテーマです。

 

ターゲティング広告について詳しくは本をお読みください。

 

GPSも、スマートスピーカーも、Pepperくんも「個人情報の観点から怖い」と、著者は言います。

 

ちなみに、リクナビ問題で、被害者である学生から訴える人が出てこない限り、「賠償」はないといいます。

 

こうした事件では、被害や損害を受けた当事者か代理人しか、訴えることができないのです。

 

また、今回は、当事者も自分が被害を受けたかどうか分かっていない、問題があります。

 

企業が個人を特定して明らかにしない限り、本人にも分かりません。

 

リクルートは開示すべきだと著者は言いますが、しないとも言っています。(法的義務はないですが、道義的義務はあります)

 

学生が怒り、まとめられる弁護士がいたら、集団で訴えてくる可能性があるからです。

 

ただ、その場合も、一人あたりの賠償額は大した額じゃなく、損害が認められる人の数も限られます。

 

これがアメリカなら、懲罰的な損害賠償も認められますが、日本の場合は、本当の実損しか認められません。

 

アメリカの裁判で、とんでもない賠償額が出ることがありますが、あれは懲罰的な賠償を認めているからなのです。以上、ここまで。

 

リクルートはかなり酷いことをしていたのだなぁと本を読んで、改めて、思いました。

 

「法律を知らないことは怖い」、と思いました。

 

この問題が発覚したことで、企業側も、ヤバイ学生を見分けにくくなり、以下のような方法をとろうと考えたのかもしれません。

 

https://www.j-cast.com/trend/2020/09/04393624.html?p=all

就活生「裏アカ」特定サービス 「問題社員の採用をあらかじめ排除」ツイッター激

 

詳しくは記事をお読みください。

 

今までは、リクナビから情報提供を受けていた企業がヤバイ社員採用を排除できにくくなり、こういう方向性に走ったのかもしれません。

 

 

3 その他の章と僕の短文書評。

 

その他の章を紹介します。

 

第2章 パワハラ、セクハラ、マタハラに見る組織風土と個人の意識改革の必要性。

 

第3章 SNS時代、茨城あおり運転殴打事件に見る、誰もがいつ巻き込まれても不思議でない事件と法律。

 

第5章 ゴーン事件に見る特別背任罪と金融商品取引法で最も注意すべきインサイダー疑惑。

 

第6章 会社法と民法から会社の仕組みと契約の大原則を知る。

 

第7章 海賊版サイトから教育利用補償制度まで、ネット時代に望まれる新たな法規制。

 

ツイッター短文書評は以下です。

 「ビジネスマンのための「法律力」養成講座 」3.5点。経営コンサルタント小宮一慶氏の本。法律初心者には目からウロコの本だった。解説が非常に分かりやすい。ビジネスマンなら知っておいた方がいい法律知識かと。六法全書とかおそらく読みにくいんだろうなぁと感じた。お勧め。

 

僕の記事を読んだ感じ、この本が非常に分かりやすく、「面白そうだなぁ」と思っていただけのでは?と自分勝手ながらに思っています。

 

僕は読んで良かったと思いますし、皆さんも自衛の意味で、最低限の法律知識で武装してください。

 

最後に、僕が読んで良かったと思う小宮一慶氏の本を紹介して終わりとします。

 

「ビジネスマンのための最新「数字力」養成講座」

図解版も発売されたようです。

 

「図解 ビジネスマンのための「数字力」養成講座」

数字力ってビジネスマンにとってかなり重要な能力であり、その基礎が学べます。

 

「ビジネスマンのための「読書力」養成講座 小宮流 頭をよくする読書法」

読書の基本が分かります。

 

また、まだ未読ですが、既に買ってある積読本も紹介します。

 

「図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書」

「図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書」

 

「「1秒!」で財務諸表を読む方法 ―仕事に使える会計知識が身につく本」

「「1秒!」で財務諸表を読む方法[実践編] ―「会社の実力」を見抜くポイントがわかる本」

「「1秒! 」で財務諸表を読む方法(企業分析編)」

「「1秒!」で財務諸表を読む方法〔経済ニュース編〕: 仕事に使える「数字力」が身につく本」

 

また、小宮一慶氏の本で、気になる本も紹介しておきます。

「あの企業の儲ける力がゼロからわかる! 決算書の読み方 見るだけノート」

 

会計の本が多めですね。

僕がそこまで深く勉強してない分野だからでしょう。

 

ではこの辺で。(6542文字)

 

このブログは個人的見解が多いですが、本・記事・YouTube動画などを元にしつつ、僕の感性も加えて、なるべく役立つ・正しいと思われる記事を書いています。

あくまで読者がさらに深く考えるきっかけとなればいいなぁという思いですので、その辺は了解ください。

 

参考・引用文献。

「ビジネスマンのための「法律力」養成講座」

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