資本主義の終わり?書評・レビュー「人工知能は資本主義を終焉させるか」PART2

どうも、武信です。(No203) 

 

前回の記事が以下です。

資本主義の終わり?書評・レビュー「人工知能は資本主義を終焉させるか」PART1

 

経済学が中級者以上の人向けの記事です。(注意)

 

「人工知能は資本主義を終焉させるか」の書評・レビュー記事です。

 

要約・引用・まとめです。

「人工知能は資本主義を終焉させるか」

 

タイトルどおり、「人工知能が資本主義を終わらせるのか?」というテーマについて書かれています。

興味がある人は続きをお読みください。

 

 

7 失われた20年の本質。「信用創造の罠」 

 

じつは、これと大きく関わっているのが「信用創造の罠」の問題で、信用創造とは、銀行がお金を企業などの顧客に貸し出すことで、世の中のお金が増えていくことを指します。

 

この貸し出しがなかなか行われないために、世の中に出回るお金の総量であるマネーストックがあまり増えていないということが、日本で起こった「失われた20年」の本質なのです。

 

実際、日本ではマネタリーベースはものすごい勢いで増えていて、それにもかかわらず景気が良くならなかったので、「これは「流動性の罠」ではないか」と言われていましたが、マネタリーベースが増えただけでは景気が良くなるとは限りません。

 

仮に、マネーストックもきちんと増えていて家計がお金を持っているにもかかわらず、お金を使わないというのなら、「流動性の罠」と言ってもいいだろうと思いますが、そもそも家計のお金がそれほど増えていないのだから、「流動性の罠」とは言えないということなのです。

 

日銀が供給する貨幣であるマネタリーベースのうちの、預金準備が大幅に増えているにもかかわらず、市中銀行による貸し出しがなかなか行われない。

 

そのようにして、信用創造が滞る「信用創造の罠」と呼ぶべき現象が、いま日本で起きているのではないかと私は考えました。

 

まさにおっしゃる通りだと思います。

 

市中銀行こそが信用創造によって、マネーをつくるドライビングフォースであるにもかかわらず、預金準備に巨額の資金を積み立てているため、企業にも支柱にも家計にも、お金が回っていないというのがいまの状況なのですね。

 

その通りですが、それは一概に銀行が悪いとも言えません。

 

企業がなかなかお金を借りてくれないという話もありまして、特に大企業や地域の優良企業には内部留保もあるので、銀行からの融資をあまり必要としていないという事情もあるのです。

 

結局、誰が悪いのかということではなく、構造的な要因として、「信用創造の罠」という現象が起こっているということなのです。P82〜86。

 

8 国の借金がゼロになる。 

 

先にも話した通り、日銀は現在、実質年間60兆円ベースで、市中銀行から国債の買い取りを行っています。

 

現状、日銀が保有する国債残高は約400兆円になっていますから、このベースでいけばあと10年もすれば日銀が保有する国債残高は政府債務残高に追いつき、民間部門が保有する国債はゼロになります

 

それは国(統合政府)の借金がゼロになることを意味します。

 

それでいて、ハイパーインフレどころか、マイルドなインフレになる気配すらありません。

 

というのも、プラス金利だと状況がまた変わってきますが、現在のようなゼロ金利の状況下での日銀による国債引き受けは、市中銀行が保有している国債を単に日銀に移動させているにすぎないので、インフレになりようがないのです。

 

ただし、いまはゼロ金利ですが、今後いつか景気が過熱したとき、現在、日銀当座預金に預金準備という形で、積み増しされているマネーが一気に信用創造という形で企業に流れ、過度のインフレが起きる可能性があります。

 

そのときには逆に、金融引き締めが必要になるので、十分に気をつけなければいけません。

 

9 「クロッシング・ポイント」のその後の日本経済。 

 

日銀の保有する国債残高が、政府債務残高に追いつく歴史的な「クロッシング・ポイント」をいよいよ通過したあと、日本経済はどうなるのでしょう。

 

日銀による、国債引き受けに批判的な人の意見として多いのは、日銀が市中の国債をすべて買い占めてしまったら、それ以上国債を買い入れる形での金融緩和は不可能になるというものです。

 

ですが、私は斎藤さんの言うクロッシング・ポイントを通過したあとは、いわば、無税国家になるのではないかと見ています。

 

国民から税金を徴収しなくても、先に述べた通り、政府が日銀に直接国債を売り、それを財源にして財政支出を行う「直接的財政ファイナンス」で政府の運営が可能になるでしょう。

 

でも、そういうことはあり得ない、どこかで深刻なインフレになるというのが、いわゆる「バーナンキの背理法」です。

 

前FRB議長のベン・バーナンキが主張したので、日本のネット社会ではそのように呼ばれています。

 

しかし、その前提が変わり得る可能性があるということですね。

 

はい。「バーナンキの背理法」が背理法にならない可能性もあり、理論上は無税国家も不可能ではない。

 

ましてや、ここまでデフレが続いている以上、貨幣発行益で財政支出を賄える可能性はまったくないわけではないと考えられます。

 

いずれにしても、日銀による国債の直接引き受けを危険視する人が少なくありませんが、危険ならば危険ということで、きちんと法整備を行えばいいのです。

 

たとえば、インフレターゲティングにして実施し、過度なインフレにならないように調整することはもちろん、日銀が国債の買い入れ額を決めて、直接引き受けを行うと法に明記すればいいでしょう。P108〜110。

 

10 不労や地産地消・個産個消の社会へ向けて1。 

 

常温核融合は、100℃以下で起こってくる反応で中性子線も一切放出されないい上に、小型化が非常に容易なので、保守管理しやすいエネルギー源になる可能性があります。

 

燃料は、海水中に豊富に含まれるリチウムからつくることができる重水素で、それほど高価ではないですし、1回燃料を入れると1年間は動き続けます。

 

大地震が起きても、核融合のように連鎖反応が起きる核分裂とは違い、反応を持続させることが非常に困難なので、装置が倒れたり壊れたりしたら、すぐに反応が止まって終わります 。

 

人間が放射線を浴びることもありません。

 

唯一のデメリットは、地球温暖化につながるのでは?という点のみです。

 

11  不労や地産地消・個産個消の社会へ向けて2。  

 

引用・まとめ。

 

食物工場は水耕栽培ですが、露地栽培に比べて、水の使用量を約20分の1に抑えることができます。

 

問題は、今稼働している食物工場の8割が赤字であることです。

 

LED光源を多数使うための電気代と、LED光源が非常に熱を持つために、それを冷却するクーラーの電気代がかさむのです。

 

小型の熱核融合炉常温核融合炉などが普及して、エネルギーがフリー化すれば、一気に解決に向かうでしょう。 

 

食物工場で野菜を栽培する場合、30〜40センチメートルの高さで栽培棚を積み上げることができます。 

 

稲の場合は栽培棚を、1メートルの高さで積み重ねることが可能で、100メートルのビルなら単純計算で、「田んぼ」を100段積み上げることができます。

 

しかも、建物の中で作物を栽培するので、雨風や台風を心配うる必要がなく、促成栽培が可能で遺伝子操作も入れると少なくとも、「12期作」が、そしておそらく、「24期作」までが可能になるでしょう。

 

24期作が可能ということは、現在1期作しかできない地域では、作物の収量が単純計算で24倍に増えることになり、これをさらに100段積み上げれば、食物自給率の向上に大きく貢献するはずです。P140、141。

 

食物工場では、コメの栽培から収穫・脱穀作業までを室内で無菌で行うことができるので、無菌状態の良質な藁を大量に得ることができます。

 

それを飼料として利用すれば、肉畜や食鳥が抗生物質を摂取することもなくなり、残留抗生物質が人体に悪い影響を及ぼすこともなくなります。

 

あとは魚介類ですが、一部、ビタミンやDHAなどを与える必要はあるものの、マグロですら、大豆やトウモロコシなどの植物性タンパク質で育つことがわかっているのです。P142。

 

合成肉が作られるのも時間の問題。

 

味だけが課題。電気代と人件費が課題ですが、大量生産できるようになったらスケールメリットで回収できるでしょう。

 

12 不労や地産地消・個産個消の社会へ向けて3。 

 

引用、まとめ。

 

エネルギーがフリー化し、電気代がただになると、基本的に、化石燃料は使われなくなり原油が有り余ります

 

したがって、石油を原料とする化学繊維も大量に生産できることになります。P145。

 

食物工場は集積度の高い農業が可能なので、農地があまり必要とされなくなり、耕作が行われなくなった膨大な農地が住宅地として供給されるでしょう

 

土地の値段は一部の大都市を除いて、ゼロに近づくでしょう。

 

建物の原材料は石油由来のものも多いので、工場できわめて安価に生産できるようになるでしょう。

 

鉄骨などの材料(鉄の原料の鉄鉱石)は、坑内堀りや露天堀りで確保し、鉄鉱石の採掘や製鉄やH型鋼や鋼板・棒鋼などの鉄鋼製品の制作も含めた、設備費や作業費が課題となります。 

 

建物を建設する従業員の確保も、課題です。

 

ロシアではアメリカ企業が3Dプリンタを使い、100万円のコストで、24時間で家を建てたそうです。

 

VR技術によって、都会に人が集まる現象に変化が見られるかもしれません。

 

VRでリアル感覚の飲み会ができるかや、「ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)」的なことができれば、人の認識が変わってきます。

 

エネルギーや衣食のフリー化と、住は建物資材や建築作業を克服すれば、人は働く必要がなくなる「不労」が実現します。

 

人は不労になったら、富裕層は宇宙旅行に興味が出てくるでしょうし、一般人はスポーツをやりたくなるのでは?と思います。

 

VRでブラジルの密林探索をしたい、という人もいるでしょう。

 

不労の先にあるのは「不老」です。

 

不老は10年以内に、ほぼ確実に実現できるそうです。

 

以上、ここまで。

 

ものすごい濃い内容の本であり、新書とはとても思えないです。

 

ここに紹介した内容は一部ですが、それでも読者にとっては読み応えのある内容だったのではないでしょうか?(というよりこんな長文記事、読み切った人は1%くらいでしょう)

 

さらに、著者の1人井上智洋氏の本を紹介しておきます。

 

この本も、今回紹介した新書に劣らず、濃い内容です。2冊(今回レビューした新書と以下で紹介する新書)とも経済学を学ぶなら、必読本でしょう。

 

「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」 

 

この新書は名著です。けっこう売れているらしく、経済学通の人なら知っているかもしれません。

 

著者のもう1冊は未読(積ん読)ですが、一応紹介しておきます。 

 

「人口超知能 生命と機械の間にあるもの」

 

ではこの辺で。(4896文字)

 

このブログは個人的見解が多いですが、本・記事・YouTube動画などを元にしつつ、僕の感性も加えて、なるべく役立つ・正しいと思われる記事を書いています。

あくまで読者がさらに深く考えるきっかけとなればいいなぁという思いですので、その辺は了解ください。 

 

 参考・引用文献。

 

「人工知能は資本主義を終焉させるか」 

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