どうも、 「ホントのメディア」~自由人のための起業・フリーランス・副業塾~運営者の武信です。(No202)
経済学が中級者以上の人向けの記事です。(注意)
「人工知能は資本主義を終焉させるか」の書評・レビュー記事です。
要約・引用・まとめです。
タイトルどおり、「人工知能が資本主義を終わらせるのか?」というテーマについて書かれています。
興味がある人は続きをお読みください。
1 世界的なデフレ・ディスインフレの著者の仮説。
先進国では資本主義の発達により、資本蓄積が十分に進んでいます。
特に、日本企業は巨額な内部留保を抱えていて、銀行からお金をあまり借りる必要がありません。
一方で、現在の貨幣制度の下では、銀行が企業にお金を貸さなければ、マネーストック、すなわち、世の中に出回るお金の量が増えない、という仕組みになっています。
一般にはあまり知られていないのですが、この仕組みの下では、企業が資金を持てば持つほど、世の中に出回るお金の量が増えにくくなっていくことになります。
こうした構造が背景にあり、資本蓄積が十分に進んでいる先進国を中心に、世界的なデフレ、もしくはディスインフレが起きているのではないか、というのが私の仮説です。
グローバル化が進んで、中国などから安い商品が入ってきたからデフレになった、というかつて流行った構造デフレ論とはまったく異なっているのでご注意ください。P38、39.
2 世界的なデフレの理由。
マネーストックは、基本的には需要側にしか作用しない一方で、供給側の要因が引き起こすデフレも当然あります。
たとえば、パソコンの価格がどんどん安くなっているのは技術革新といった供給側の要因によるものです。
また、パソコンが安くなったからといって、他の財やサービスに金を使うとは限りません。
さらに、スマホ一台で何でもできてしまうので、他の商品が売れなくなっているとも言えます。
マネーを供給しても追いつかない状況(供給が持続的に増え続けると、需要が追いつかない)があり得ます。
つまり、「ハイパーデフレ」の時代突入もありえるのです。
日本を含む先進国で、「総需要の絶対的不足」があるような気がします。
少子高齢化が進んでいるのであれば、供給不足が起きてインフレになるはずです。
現役をリタイヤした高齢者が増えて働かない人が増えるならば、労働人口は相対的に減るので、供給サイドが弱くなる一方、需要側であるお金を使う人が増えるので、モノやサービスの値段が上がります。
老後に備えてお金を貯めている人が多ければ、状況は異なりますが、今国内では団塊世代が大量に引退し始めているので、インフレになっていないとおかしいのですが、デフレ気味です。
ということは、それだけ景気が悪いので、マネー不足からくる影響が強いと思われます。
3 企業は今後人を雇わない&国籍離脱税をかけるべき。
ピケティの「R>G」は、R(資本利益率・資本家の取り分の成長率)がG(労働者の賃金の経済成長率)に合わせて増えていくと考えた場合、資本家の取り分の方が、労働者の賃金を上回るペースで増えるという意味です。
今後AIやロボットが生産手段の中心になれば、労働者の取り分である賃金の割合は減っていくでしょう。
企業は人を雇わずに、AIやロボットに仕事をさせるからです。
アメリカのように市民権や永住権を放棄して、国籍を離脱する人が所有する純資産に課税する、国籍離脱税をかけるべき。
4 フィッシャー方程式
フィッシャー方程式。
R(名目利子率)=r(実質利子率)+π(期待インフレ率)。
名目と実質の違いは、物価変動を考慮するかしないかという点で、名目利子率から物価上昇率(期待インフレ率)を取り除いたものが、実質利子率です。
同時にr(実質利子率)=p(主観的割引率、以下「割引率」)+g(実質経済成長率)という関係も成り立っていて、割引率とは、「消費者が将来受け取ることができるお金などの価値(将来価値)が、現在それを受け取ったらどの程度の価値(現在価値)になるかを計算するときに使う換算値」です。
これはどういうことかというと、たとえば私たちが1年後にチョコレートを1個もらえるよりも、いあ(誤植。本文を読まないと分からないです)1個もらえるほうがいいと考えていて、1年後にチョコレートをもらうなら2個でないと釣り合わないと考えるなら、割引率は50%になるわけです。
「r=p+g」という式から考えると、割引率よりむしろ、実質経済成長率が実質利子率を決めるうえで、重要な役割を果たしていることがわかります。
というのも、割引率は歴史的にあまり変化しない値ですが、日本の実質経済成長率はこの20年間にわたり、0.9%程度で推移してきた反面、過去には10%を超えていた時代もあり、変化の幅が大きいからです。
実際に理論モデルに基づいて計算してみると、pとgを足し合わせたものが長期的にrに一致することが確かめられますが、実際の経済がこの式の通りに動くかどうかはわかりません。
しかし、だいたいこのような関係にはなっているということは言えると思います。
P79〜80。
5 長期的な目線。
もう少し長期的に考えてみましょう。
日本の失われた20年で言うと、Rはおよそゼロで、デフレなのでπはマイナス、そうするとrはプラスでgもプラスになり得ます。
実際、間近20年間ではgが約0.9%のプラスでしたから、πがマイナスの値を取るデフレ期に実質経済成長率gがプラスだったということで、一応の整合性が取れていることになりますね。
ゼロ金利では、経済成長しないというわけではないのです。
もっと景気が良くなっていけば、そのうち名目利子率Rを引き上げてプラスにしていくことができるでしょう。
Rが十分増えていけば、多少インフレ率πが上昇しても、rやgがプラスに成り得るので、この式の整合性は保たれます。
異常な「ゼロ金利+デフレ」の経済状態から、ノーマルな「プラス金利+ゆるやかなインフレ」の経済状態への移行も可能なのです。P81、82。
6 流動性の罠とお金の量の話。
まず、一般に経済学の教科書に出てくる「流動性の罠」とは、名目金利がほとんどゼロまで下がった場合、通常の金融政策は効力を失うので、お金の量を増やしても景気が良くならないという状況を指します。
日本はこの「失われた20年」のあいだ、ゼロ金利政策をとっていたので、「流動性の罠」に陥っていたのではないかと言われてきたわけです。
たしかに、日銀がお金の量を増やしても景気がなかなか良くならず、消費需要が増えない状況が続いていたのですが、私は「ヘリコプターマネー」で、その「お金の量」をきちんと区別しなければならないと指摘したのでした。
これは、一般のマクロ経済学の教科書にも載っている話ですが、「お金の量」にはマネーストックとマネタリーベースの2つがあり、それぞれマネーストックは現金と預金、マネタリーベースは現金と預金準備(預金準備制度のもとで、市中銀行が日銀に預け入れることを義務づけられている「法定準備」だけでなく、それを超える「超過準備」も含まれている)を足し合わせたものです。
マネタリーベースのうち、預金準備は基本的には、日銀が市中銀行から国債を買い取る「買いオペレーション」(買いオペ)によって供給されたマネーです。
そうして得られたマネーは預金準備として、日銀に開設された当座預金(日銀当座預金)の口座に預け入れられるわけですが、日銀が量的緩和政策などの金融政策を行っても、日銀当座預金にお金が貯まっていくだけで、私たちの手元に直接届くわけではないのです。
日銀のデータによれば、2017年6月末のマネタリーベース残高は約468兆円で、そのうち約320兆円を預金準備が占めています。
それだけのお金が日銀当座預金に積み上がっているわけです。
日銀の「買いオペ」によって供給されたこうしたお金が、私たちの手元に届くには、市中銀行が企業に貸し出しを行い、さらに企業が賃金などの形で家計にお金を渡していく、という流れが生まれなければいけません。
そのようにして、世の中に出回っているお金の総量がマネーストックなのです。
ではこの辺で。(3686文字)
このブログは個人的見解が多いですが、本・記事・YouTube動画などを元にしつつ、僕の感性も加えて、なるべく役立つ・正しいと思われる記事を書いています。
あくまで読者がさらに深く考えるきっかけとなればいいなぁという思いですので、その辺は了解ください。
参考・引用文献。
「人工知能は資本主義を終焉させるか」